運用型広告の入札単価の考え方、集客施策におけるマクロとミクロの視点

入札単価調整あれこれ

入札(Bid)は基本ではあるが奥が深い。

  1. きちんと広告が表示されるかどうか、意図した露出機会を得られるかどうか
  2. CPAが許容範囲内かどうか

これらは入札によってコントロールされる。運用型広告の入札はセカンドプレイスオークションであるため、入札単価と実際に課せられる単価は異なる。これを想定して入札単価を決める必要がある。

近年ではDSPのシステム側で入札単価を調整してくれる自動入札機能もある。入札単価の決定自体は人間よりもシステムのほうが相性もいいため、自動入札機能を持つDSPについては自動化アルゴリズムに任せるのがいいかもしれない。
ただし手動入札しかできないDSPもあるし、自動であっても配信結果の予想・把握をするためには入札単価を決める仕組みについては理解しておかなければならない。

入札単価の決め方

オークションという仕組みになっている以上、他の広告主の入札状況によって、入札単価を上げていくとある途端に急に表示機会が増大するということがあり、逆に入札単価を下げていくとある単価で急に表示されなくなってしまうこともある。この挙動はDSPとSSPの組み合わせによってさまざまで、競合の参入状況、時期によっても異なる。

このように入札単価と実際の表示機会(インプレッション数)の関係は非線形になってしまう。

単純にラインアイテムごとのCPAが目標CPAに収まるように入札単価を設定すると言う人もいるが、これは間違い。自分都合だけでなく他者の状況によっても入札単価を決めるべきである。

入札単価と予算

入札単価によって1日の露出機会の量、インプレッション数が決まってくる。したがって変動はするもののおよその1日の消費金額も決まってくる。ここで高い入札単価(=露出を増やしたい設定)にもかかわらず極端に低い予算を設定していたりすると、無駄が生じることになる。その予算ならもっと低い入札単価でも予算を超えない範囲での十分な表示機会は得られた、というケースである。

入札単価が上がれば露出機会は増大する。その中で

  • 「コスト≒入札単価×露出機会」を一定以下に抑えながら
  • 「露出機会」を最大化する

という構造になる。

理想は入札単価だけで予算進捗をコントロールすることなのだが、現実的にはすべてのラインアイテムでそれを実現するのは難しいし、突発的な露出増にも対応できないため、予算を設定することになる。ただしあまり多くの機会損失の発生しない範囲で予算と入札単価は設定しよう。

自動入札機能

予算や目標のCPA、CPCに合わせて実際の入札単価を自動で調整してくれる、動的に決めてくれるDSPもある。入札金額の上限は手動で設定するが、実際の入札はそれ以下の金額で動的に行うものもある。Google AdWordsでいうところの拡張CPCやコンバージョンオプティマイザーなどである。このあたりの仕様はDSPによっても異なる。
上記のようなことを常に人間が考慮しながら毎日入札調整を行うのが現実的でないため、こういったことはシステムに委ねるのが実は安全で確実。それは決して手抜きではなく、人間とシステムの得意な領域の分担なのである。

低単価で獲得できる限界

リスティング広告では指名検索のキャンペーンは低CPAでCVを獲得できるが、配信量の上限は指名検索の検索数であるため、一定のボリュームまでしか配信できない。それを超えるとどれだけ入札単価を上げても配信量を増やせない。そこで一般ワードに手を伸ばすことになる。

ディスプレイ広告では、大まかにリマーケティングのキャンペーンは低CPAで獲得できるが、配信量の上限はマーク数に依存する。マークから配信できる有効なリーチの上限に到達すると極端に配信単価(CPM、CPC)が悪化し、CPAも悪化するため、それ以上入札を上げるのは得策ではなくなる。

このように低CPAで獲得できるCVの数と配信量には限界があり、それを超えると入札単価を上げるのが不適切となる水準が存在する。

入札単価調整とアロケーション

運用では入札単価の決定とは別に、予算配分を決めるのも重要な問題である。

  1. ラインアイテムの(最適な)入札単価を決める
    上記の低CPAで獲得できるちょうど限界となる入札単価を設定する
  2. 各ラインアイテムにどのように予算を割り振るか
    低CPAでCVを獲得できるキャンペーンの予算は大きく、CPAの高いキャンペーンの予算を小さくする

これらは別問題であり、それぞれ分けて取り組む必要がある。

自動最適化機能をもつDSPの場合、1.と2.のどちらが行われるのか。留意して

ミクロとマクロ

広告運用、ひいては集客施策全般においてミクロ視点とマクロ視点がある。

ミクロ視点

ミクロ視点は各施策の精度を高める取り組み。具体的には

  • ターゲットにマッチしたクリエイティブを出し分ける
  • ブラックリストを追加する
  • 入札キーワードのマッチタイプを調整して精度を上げる
  • 入札単価調整

などがある。細かいことの精度を高める、各広告グループのCVRを上げる考え方である。
検索連動型広告の考え方が典型的なミクロの考え方で、リスティング広告に始まる広告運用の世界は古くからのこのスタイルで行われてきた。

マクロ視点

マクロ視点は主に施策、キャンペーンごとの予算配分や配信ボリュームを決めるものである。

この施策は効率がいいので強めに、逆にこの施策で効率果が悪いので弱めに、もしくは停止して他の施策に予算を回すなどを考える。
広告配信に限らず、SEOやソーシャルなどを含めて、成果のインパクトを考慮しながら施策を実施するか否か、予算配分をどうするかを考えていく視点である。
たとえばいま追加的に使えるプロモーション予算が200万円ある時、どの施策に使うのが最適か?という議論のことである。
デバイスごとの配信比率を変える(効果のいいデバイスに予算を寄せる)のもマクロの考え方である。

どんな施策も施策深度によって効果(CPA)の伸びやすいフェーズと伸びにくいフェーズがあり、これ以上予算をかけても成果が出ないタイミングがある。そういったボトルネックを見極めながら、最適な予算配分を実現するのがマクロ的視点。
単純なCPA(ラストクリックからのコンバージョン)に基づいた議論だけでなく、アトリビューション(ビュースルーを含めた間接効果)を考慮することもある。認知から刈り取りまでの前後関係、因果関係も考慮した考え方である。

大変難しい。第三者配信を導入して正しくアトリビューション解析をできているのであればある程度可能かもしれない。
それでもSEOのようにコントロールできない要素、マス広告やPRのように計測困難な施策の効果も本来は同時に考えるべきである。

ディスプレイ広告の波及とともにその効果を評価するマクロ的な視点が現れるようになった。まさに「予算のアロケーション」などと言うようになったのはここ最近である。

ミクロとマクロの関係

現在リーセンシー30日、全ページ1PV以上という条件のリマーケティングだけで現在月間50万円のコスト/50CVが発生している。

この50万円を配信先を絞り込む、セグメントを細分化するなどさらに効率的に(CVを減らさずにコストを下げる)運用しようとする発想がミクロ。
予算がもっとあり、他の効果的な配信方法を模索するのがマクロ。

マクロとミクロは相対的であり、いずれか片方の視点だけで広告を運用することは難しくなっている。
ミクロの最適化をしたキャンペーン(施策)が複数あって、それらにマクロの視点でどのように予算を割り振るか考えるのである。

ただマクロに強い運用者(会社)とミクロに強い運用者(会社)は分かれるかもしれない。
日本では従来の運用スタイルがミクロ寄りなので、基本的にある程度まともに運用していると、常識的な範囲でミクロ最適化ができてくる。それでも意外とマクロよりの運用が不十分で、デバイスごとの配信比率設定など甘いことがある。その場合インパクトが出るのはマクロの施策になる。

運用型広告の基本的な考え方

以上を踏まえてまとめ。

考える順番

  1. 狙う(人、キーワード、プレースメントなど)→ターゲティング
  2. 狙ったところに表示させる→入札などの設定
    • 表示されたかどうか(インプレッション)
  3. 効果を見る
    • クリック
    • コンバージョン
  4. 入札などの調整によってコンバージョン単価を合わせる

キーワード広告もディスプレイ広告も同じ

ここでは「セグメント」という言い方をする。

  • ディスプレイ広告でいえば
    配信先、地域、属性、ユーザリストの種類など、ターゲティング条件とされるもの
  • 検索連動型広告でいえば
    キーワード

のことを共通して指す。配信対象となりうる候補の塊である。
配信対象とするセグメントが「ターゲット」ということになる。

運用のスタンス

  1. 最初は広げる、CVの見込めそうなセグメントを探す
  2. 効率のいいものに寄せる
  3. 一方で未知の領域で新しいセグメントを試す

効率的な探す手順、寄せる手順はある。

  • CVの取れるセグメント
    • CPAが高い→CPAが極端に高くならないようにコントロール。安易には弱めない。
    • CPAが低い→入札は強化。予算制限を受けないようにする。
  • CVの取れないセグメント
    • CPAが高い→入札を弱める、配信停止する
    • CPAが低い、そもそも露出がない→放置

両立しないものの見極め

  • その間でバランスを取れるものなのか
    • ボリューム/効率
  • それとも一方の踏み切らなければならないものなのか
    • 品質スコアを狙う/諦める

このあたりに気づいて正しいスタンスを取れる人は強い。

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