旧来からあるニュースメディアなどのサイトに加え、雑誌もwebメディアを持つようになってきている。また最近ではオウンドメディアも乱立しているなど、数多くのメディアサイトがひしめき合っている。
こういったサイトではお問い合わせ、資料請求といった目先のコンバージョンがない。会員登録などはあったとしても、サイト全体のゴールというほどの位置づけではない。
こういった目先のコンバージョンポイントのないメディアサイトのアクセス解析で考慮することを解説する。
目次
メディアサイトの分析で考慮すること
メディアサイトのイシュー
メディアサイトの運用の主眼はPV数を増やすことに置かれていることが多い。
それ以外ではユーザ数を増やす、滞在時間を上げる、会員数を増やすなどである。
それを実現するためのサイト内での施策は
- コンテンツ
何がウケるのか、どんな記事を書いたらいいのか - UI
基本的にページ遷移させることに主眼- メニュー等共通パーツ
- テンプレートごと
- 記事ごと
- リンク
- ページ分割
- キャンペーンや広告(タイアップ)の企画
オウンドメディアの場合、将来のコンバージョンにつながるユーザの獲得ということが重要になる。
とはいえメディアである。メディアとしての役割が果たせないとわざわざオウンドメディア施策をやる意味はないので、上記のことは考慮しなければならない。
ページの分類
メディアサイトの構造はどうなっているのか。
たとえばEコマースであれば
- トップページ
- 商品一覧
- 商品詳細
- カート~購入遷移
が代表的なサイト構成となる。
メディアサイトでは、2つの切り口から見ることになる。
- ユーザに情報を与える上での(=情報設計上の)機能
- 内容(トピック)
重要なのは最初の計測設計の段階でこれらの属性を各URLに紐づけておくこと。
そしてGoogleアナリティクスであればコンテンツグループとして登録することである。
ページの機能別分類
- トップページ
- 記事一覧
- カテゴリ別
- 著者別
- ○○別
- 新着記事一覧
- 個別記事
- その他個別ページ
- キャンペーンLP
- 業態に応じてケースバイケース
- 会員登録遷移
これらは機能による分類である。
トップページはサイトを代表するページという機能がある。会員登録遷移には会員登録させるという機能がある。
どんな話題を扱っていても、共通してこれらの機能は必要となる。
そして機能によって閲覧状況、ユーザに期待する動きは異なる。個別記事ページはすべてのテキストを読んでもらうことがゴールになるし、記事一覧ページは目的の記事に遷移してもらうことがゴールになる。
機能別に見るべき指標やその目標値は異なる。読了率やページ閲覧時間などを記事一覧ページで適用するのがナンセンスなのはわかるだろう。
そもそも機能の違うページは比較対象にならない。トップページを個別記事ページと比較する意味はないし、記事一覧ページと比較することも不適切である。あくまでこれらは別々に議論、評価すべきもの。比較というのはユーザに与える機能、すなわちページを見るシナリオがある程度同じページ間で行うべきものである。
分析において念頭に置くべきは機能分類ごとに分析するということなのである。
ちなみによく言われる「コンテンツ」というのは記事一覧ページ+個別記事ページのこと。これらをトピックや編集意図によって分類して分析していくことになる。
ページの内容(トピック)による分類
これとは別にコンテンツによる分類、すなわち記事のさまざまな切り口からの分類がある。
- カテゴリ
- 大カテゴリ
- 小カテゴリ
- 著者
- 編集意図(メタ情報)
- 特定の情報を知ってもらいたい
- エンゲージメント強化
- 賑やかし
- 自然検索からの集客
カテゴリや著者は記事の属性、インデックスとしてCMSに登録されているものだろう。編集意図というのが難しいかもしれないが、記事ごとにある、記事の目的や閲覧者に対して期待する行動などに基づく分類である。たとえば自然検索集客のためのストック型コンテンツ、バズ狙いの面白記事、コンバージョンさせるための訴求型コンテンツといったものになる。
すべてがバズ狙いの賑やかしの記事であっても中身の薄いメディアになるし、エンゲージメント強化ばかり意識していても訪問者が来なければ意味がない。メディアにおいて重要なのは編集方針に基づいてこれらの個別記事ごとの狙い(意図)のバランスを取っていくことである。これがメディアの「色」になり、ブランドになる。
ストック型の記事を作るのにバズ狙いの要素を入れるとコンテンツがブレて本来の効果を発揮しにくくなるだろう。CMSには登録しないかもしれないが、あとでそれぞれの編集意図が正しく機能しているかを確認し、編集にフィードバックするためにも必要な分類である。
またここではキーワードやタグクラウドのように細分化されすぎた切り口で見ても分析とアクションがとりにくい。分析にはある程度の粒度が必要である。
「コンテンツ」の部分、主に個別記事についてこれらの分類ごとにパフォーマンスを見ていくことになる。
Googleアナリティクスでコンテンツグループを設定する場合は、機能別分類で1軸、残りを内容別の各分類(カテゴリ、著者、…)に割り当てることになる。
コンテンツの役割と見るべき指標
上記は分類、ディメンションにあたるもので、今度は見るべき数値、指標を説明する。
サイト全体のパフォーマンスを表す指標
メディアの規模を示す指標として
- ユニークユーザ数
- ページビュー(PV)数
- (訪問頻度)
コンバージョン寄りの指標として
- 一定のページ数以上閲覧(○ページ以上閲覧)
- 特定のページの閲覧数(ページビュー数)
- 特定の目的がある場合(オウンドメディアへの遷移など)、その数
など。これらはアクセス解析ツールでコンバージョン設定しておくといい。
コンテンツの役割
そもそも記事・コンテンツの役割は大きく2つに分かれる
- 流入に貢献
- 回遊・滞在に貢献
流入に貢献するコンテンツの評価
当然流入数を見ることになる。
流入が多くなると、流入意図とコンテンツがマッチしない流入もそれなりに含まれるため、直帰率・離脱率が高くなることがある。バズによる流入はそうだし、自然検索流入でもテールワードからの下層への流入のうちは直帰率が低いが、一般ワードでの上位表示など大きな流入になると検索意図がばらけるため直帰率は上がる。
流入数を増やし、同時に直帰率を下げるのは理想ではあるが、実現するのはなかなか難しい。これは仕方ないことで、直帰率・離脱率を下げるために流入が減るのは本末転倒。
流入を目的としたページ(バズ狙いのページなど)にはあくまで流入の最大化を最優先に考え、回遊は二の次としたほうが施策をしやすい。そして流入に大きな影響を与えるのは見出し。これによってCTRが変わるし、見出しが面白ければ露出の機会も増えやすい。
読ませるコンテンツ
離脱率が低い、ページ閲覧時間が長いコンテンツ。
しかし流入の多いページの離脱率は上記の理由であてにならない。興味の薄いものが含まれる大量の流入でも、2ページまで遷移すればそれなりにサイトへ興味を持っているということ。そこで流入2ページ目以降の離脱率を指標とする。
もちろん離脱率が低くてもそもそもPV数が少なければ議論の土俵にも上がらない。鳴かず飛ばずのコンテンツでは評価のしようがない。それなりに多くの人が見てくれており、かつ興味を持たせ続けるのに貢献しているコンテンツこそが優秀なのである。
それを評価するのにちょうどいい指標が、2ページ目以降で、そこから次のページに遷移させた数である。興味の薄い流入の影響が排除された、ボリュームと回遊貢献を表す指標なのだ。実際にデータ分析するときも単純なPV数を使うより安定した結果を出しやすい
当然「読ませる」ということは、見出しより記事の内容が重要になる。
ページビュー数に着目する危険性
PV数というのは上記のように流入によるPVなのか、サイト内回遊によるPVなのかによって増減のメカニズムが大きく異なる。
またコンテンツ以外の技術的な要因で紛れを生みやすい。
たとえば一つの記事がページ分割によって3ページに分かれているなどのケース。当然ページ分割数の多い記事はPV数が多くなる。だからといってその記事が人気あるのかというと、そうではない。
またUIが悪いためにブラウザバックが多く発生したことで特定のページのPV数が増えたケース。そのページの評価が高いのかというと、そうではない。単に誘導先のページが悪いというだけである。
PV数を見るよりは記事を閲覧したセッション数、ユーザ数、つまりコンテンツのリーチで見ることが実態に沿った正確な認識につながる。
コンテンツ評価の指標
ページ別、ページ分類別に見る。
基本的な指標
- 規模
- ページビュー数
- 流入
- 流入数
- 回遊・滞在
- 直帰率
- 平均閲覧時間
これらに加え、一般的には知られていないが回遊・滞在を見るうえでは以下の指標を見るのも有効である。
- 2ページ目以降(流入ページを除く)離脱率
- 2ページ目以降(流入ページを除く)で次のページに遷移させた数
そもそも流入ページではどうしてもサイトに興味のない人のページビューが含まれる。タイトルを見てついクリックしただけというようなケース。流入意図と着地ページのコンテンツ(こちらが伝えたいこと)が合わない、意図せざるページビューが含まれてしまうのである(それでも流入に貢献しているため、必ずしも悪いことではない)。
ところが2ページ目以降であれば、いわば流入ページでサイトに興味があるというフィルタリングをされて遷移してきたわけで、その意味では行動が安定している。2ページ目以降での離脱は
- サイトに来訪した目的を完了した
- サイトに興味は持ったものの、そのページで興味をなくした
などを意味する。1のケースは特定のページに限定されるわけで、上記の分類を適切にしたうえで数値を見れば純粋に2を評価できる。
実際に2ページ目以降のみ抽出した指標を採用すると数値が安定し、評価しやすくなる。
レポート
ここからは具体的なレポートの構成である。
機能別の仕事っぷりを「把握」
全体のベンチマーク。
個別ページではなくページ群の単位で見る。
- 機能別
- トップページ
- 記事一覧
- 個別記事
- その他
- 記事カテゴリ別
- 大カテゴリ
- 小カテゴリ
- その他の様々な意図(編集部が読者に期待する心の動き)
「機能別」×「カテゴリ別」の掛合せで以下のコンテンツ評価指標を見る。
- ページビュー数
- 流入数
- 直帰率
- 平均閲覧時間
- 2ページ目以降(流入ページを除く)離脱率
- 2ページ目以降(流入ページを除く)で次のページに遷移させた数
どういう(内容)記事がどんな力を持つかを「把握」
記事ページに限定して、上位ページのみ
以下のどれにあてはまるか分類していく。
- 流入を稼ぐ記事(流入数上位で)
- ソーシャル流入を稼ぐもの
- (非指名の)自然検索を稼ぐもの
- ニュースサイトからの流入を稼ぐもの
- その他の流入(直接/リンク流入)を稼ぐもの
- 直帰しているものとそうでないもの
- 滞在時間が長いものとそうでないもの
→流入数ほど重要ではない
- PV数を稼ぐ記事(非流入PV数上位で)
- 成果を稼ぐ記事
- CVR(CVポイント別)
記事が仕事しているかどうか「検証」
個別記事別に以下の着眼点で見ていく。
- 流入
- ポテンシャルはあるかもしれないが露出が少ない
- 露出したけどダメ
- 精読
- 閲覧時間
- 回遊
- 流入数上位ページの場合
- 離脱率
- 平均PV数
- 平均滞在期間
- 非流入PV数上位ページの場合
- 離脱率
- 流入数上位ページの場合
- 成果
- CVR
→流入やPV数が多いのにパフォーマンスが悪いものはできれば改善したい。しかし○○に強いコンテンツと△△に強いコンテンツはそれぞれ違うはずなので、それぞれの特徴を把握する。「二兎を追うものは一兎も得ず!?」
どんなコンテンツがウケるか
最も知りたいのはここだろう。たとえば「アイドルのゴシップ記事はウケる」「野球で阪神の記事がウケる」などというようなものである。
個別記事ではなく、上記のページのトピック分類別に見る。
たとえば
- 記事に「アイドル」のようなタグを付け、タグ別に
- 野球の記事でいえば球団別に分類し
コンテンツ評価指標を見ていく。
流入を稼ぎやすいカテゴリ、サイト内回遊させやすいカテゴリ、そういうものを見出していく。
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