Googleアナリティクスなどのツールにとらわれないウェブ解析の基本的な考え方


ツールを問わずやりたいのはアクセス解析

Googleアナリティクスは無料でアクセス解析、ウェブ解析ができるツールで、手軽に使えるような環境からよく「Googleアナリティクスの使いかたを学びたい」という声が出てくる。

有料なので使う人はあまり多くはないが、アクセス解析ツールといえばAdobe Analyticsも同じ仲間であり、やることは同じである。

重要なのは「Googleアナリティクス」という固有のツールの使い方を知ることではなく、アクセス解析/ウェブ解析の目的とプロセスを学ぶことである。ツールの違いは方言みたいなもので、使うときに知識として学べばいい。そうしておけばGA、AAだけでなく、どんなツールにも対応できるし、ログ解析にも応用できる。

逆にそれを知らないと、情報量が多い、画面構成が複雑であるアクセス解析ツールに惑わされて
肝心のやりたいことをできない、出すべき情報を得るのに無駄に時間がかかってしまう。

ということで、まずはアクセス解析の基本的な考え方を整理する。

分析の基本的な考え方

アクセス解析/ウェブ解析の前に、そもそも分析とはどういうものかを踏まえておく必要がある。これについては以下のページを参照のこと。シリーズの後のページまでは読まなくてもいいが、このページの内容は押さえておこう。
https://www.marketechlabo.com/objectives-approach-data-analysis/

ウェブ解析でもクロス集計を意識する

ウェブ解析においても上のページで説明したようなクロス集計を意識するのがいい。

ディメンションごとに指標を見る。ドリルダウン、スライス、ダイスを駆使して深掘りをする

ということである。

それを強く意識することが、数多くの項目とレポートの種類がある解析ツールの画面に惑わされない秘訣になる。

そしてそういったツールがなくても、データさえ揃っていればピボットテーブルを駆使してExcelでも分析ができるということがわかるだろう。むしろある程度進んだ分析ではGoogleアナリティクスの画面を使わず、ExcelやTableau、最近ではGoogle Data Studioをメインに使った分析が普通になる。

Adobe Analyticsでも同様に「ワークスペース」というTableau/ピボットライクな画面を使った分析が中心になっている。

それが最近のウェブ解析のトレンドになりつつあるのである。

アクセス解析の指標とディメンション

指標とディメンションが重要になるわけだが、実際にアクセス解析ツールの画面で見ると

指標

ビルトイン指標

アクセス解析ツールにビルトインで実装されている指標で使うのは

  • PV数
  • セッション数(訪問数)
  • 人数(ユーザ数、ユニークユーザ数)
  • コンバージョン数(問合せ数)
  • 滞在時間
  • 直帰率
  • 離脱率

あたりになる。Googleアナリティクスでは約200の指標があるが、実際に使うのはほとんどここに集約される。

指標は作ることもある

ところが重要なのはこれらの指標に基づいて

  • ○○したセッション数
  • ○○した人数

などの指標を新たに作れるということである。

「○○した」というのは、「商品詳細ページを閲覧した」「会社概要ページを見た」など、こちらが知りたい内容に合った特定の行動である。「コンバージョンしたセッション数」などというのも、結局「コンバージョン完了ページを閲覧したセッション数」ということでしかない。

こういった「特定のステップに到達した数」を指標化するというのは、コンセプトダイアグラムやカスタマージャーニー的な考え方で必要となる。そこでは「○○した」の部分の着眼点が重要になる。

数と率は分けて考える

絶対数率・平均系の指標は分けて考える

  • 絶対数→セッション数、CV数
  • 率・平均→CVR、平均PV数

たとえば「対前月比でCV数は減少したが、CVRは上がった」というケース。
絶対数と率(平均)は時にトレードオフの関係になることもある。特にCV数が大きくなるとCVRが下がるというのは広告の世界でありがちで、獲得ボリュームを増やそうとするとCPAは悪化するのは当然のことである。

指標の因果関係を踏まえて

  • 「セッション数」×「コンバージョン率」=「コンバージョン数」
  • 「セッション数」×「平均PV数」=「PV数」

「コンバージョン数が増えた」

なぜコンバージョン数が増えるのか?セッション数を増やせばCV数も増えるし、CVRが上がればCV数が増える。「コンバージョン数が増えた」というだけではどちらなのか分からない。この意識は目標・KPI設計においても重要となる。直接「コンバージョン数を増やす」アクションはない。「流入を増やす」か「コンバージョン率を上げる」か、どちらかのアクションしかないのである。

PV数についても同様で、ユーザが訪問して、何ページか見る。その一人一人が「何ページ」見たかというのが平均PV数である。その積み重ねでトータルのPV数になる。

数×率(平均)=数

努力できる施策に直結する指標は率・平均系の指標になる。

  • コンバージョン数 → コンバージョン率
  • 流入数 → 平均流入単価

数の問題だけであればお金をかけて広告を出せば解決する。それだと赤字になって意味がないので、CPAという平均の指標が重要になる。

切り口(ディメンション)

アクセス解析ツールにビルトインで実装されているディメンションでよく使うのは

  • デバイス(モバイル/デスクトップ/タブレット)
  • 新規訪問かリピート訪問か
  • ユーザ属性(性別、年齢など)
  • 流入元
  • 流入ページ(ランディングページ)
  • ページ(URL)
  • ページのカテゴリ

あたりになる。Googleアナリティクスでは約250のディメンションがあり、これら以外のディメンションを使うこともある(指標ほど使うものが限定されているわけではない)が、まずはこのあたりを意識しておけばいい。

ディメンションの深掘りはマクロからミクロへ

ディメンションの深掘り、ドリルダウンはマクロからミクロに掘り下げていく方向で考える。最初からすべてミクロに見ていたのでは追いつかない。

たとえば流入キーワードの場合、

  • ミクロ:流入キーワード1個ずつ見ていく
    • 「トヨタ」
    • 「トヨタ 中古車」
    • 「プリウス 中古車」
    • 「プリウス 中古」
  • マクロ:流入キーワードをグループ化して
    • 「トヨタ」を含む
    • (トヨタの車種名)を含む

記事ページの場合

  • ミクロ:記事1個ずつ
  • マクロ
    • 記事のカテゴリ単位でまとめたグループ
    • 著者単位でまとめたグループ

に相当する。まずはマクロで着目するところを決め(同時に無視するところも決め)、気になったところについて細分化をするのがいい。

  • マクロ的視点は課題を抽出する
  • ミクロは課題を解決するアイデアを得る

のに使おう。マクロだけだと、問題があることは分かってもどのように改善したらいいのかわからない。

ディメンションの掛け合わせで世界が広がる

ディメンションの深掘りだけでなく、ディメンションを掛け合わせて見ることで分析の視野が広がる。自由に掛け合わせて分析しよう。Googleアナリティクスの画面やAdobe Analyticsの定型レポートでは苦手なところで、ここでTableauやGoogle Data Studioなどが力を発揮する。

  • 流入元×流入先(ランディングページ)

分析のスコープ、見る単位

ウェブ解析には3つのスコープ、対象の粒度がある。

  • ページ(ヒット)単位
  • セッション単位
  • ユーザ単位

それぞれで着目する指標やディメンションも変わってくる。

ページ

たとえば単純にどのページが最もよく見られているか。
具体的な指標やディメンションは

  • ページビューの指標
    • PV数
    • 離脱率
  • ページビューのディメンション
    • ページ(URL)
    • ページのカテゴリ

記事ページの評価などではこの観点になることもある。
ユーザ行動の一部を切り取った情報にすぎず、あまりに他の情報が欠け過ぎてしまうため、あまり使わない。

セッション

一度サイトに流入して、そこから離脱するまで。
どこから流入したか、どのように遷移したか、コンバージョンしたかどうか。
具体的な指標やディメンションは

  • セッションの指標
    • セッション数(訪問数)
      • 〇〇したセッション数
    • コンバージョン数(問合せ数)
    • 滞在時間
    • 直帰率
  • セッションのディメンション
    • デバイス(モバイル/デスクトップ/タブレット)
    • 新規訪問かリピート訪問か
    • 流入元
    • 流入ページ(ランディングページ)
    • 流入ページのカテゴリ

通販でいうと「今回の購入単価」はこの考え方に対応する。

ユーザ

離脱、再訪問を含む一連の動き。複数セッションにわたる、セッションをまたいだ観点。分析の粒度でいうと最も大きい。
この人は「リスティング広告から3回流入している」などの話。

  • ユーザの指標
    • 人数(ユーザ数、ユニークユーザ数)
      • 〇〇したユーザ数
  • ユーザのディメンション
    • ユーザ属性(性別、年齢など)

通販でいうと「累積購入金額」「購入回数」などもこの考え方。

以前はセッション分析しかできなかったが、ここ5年くらいでユーザ分析ができる環境も用意されるようになってきた。しかしデータの構造や分析手法自体が複雑になってしまうため、ユーザ単位分析が進んでいるとも言いにくい。ただユーザ単位分析の必要性自体は説かれている。「カスタマージャーニー」などはまさにユーザ単位の視点である。

まずはセッション単位分析をきちんとできるようにすることが重要。

3つのスコープは異なるので、今どの単位の分析をやっているのか、見失わないこと。指標やディメンションにも対応するスコープがあるため、見失わないように気をつけよう。指標やディメンションのスコープは解析ツールを問わず基本的には同じで、スコープを間違うとおかしな分析アウトプットになる。

分析とビジネス

分析はビジネスを回していくために行う。ではビジネスを回していく流れの中での分析・データの位置づけを整理しよう

データを活用したビジネスサイクルの理想像

ビジネスにおけるデータとの付き合い方には2種類ある。

  • データオリエンテッド→データに基づいて考える
  • イシューオリエンテッド→イシューに基づいて考える

データオリエンテッド

  1. 正しく現状把握ができている。最初のステップであるが、これができているだけでも重要。この正しい認識がないと施策の考えようがない
  2. 数値変化の原因、健康的な数値と不健康な数値の峻別がわかる→イシューが特定できる
    • 「CVRが急落」→これは問題か?しかしディスプレイ広告を配信して薄いユーザが大量に流入したためというのであれば、問題ない。
    • ほとんどの数値変化には妥当な理由があり、本当に問題のある数値変化のほうが少ない
  3. それに基づいた施策の立案、実行ができる
    • マイナスをゼロにする
    • どんな施策がいいかわからないが、PDCAを回して模索
  4. データを効果的に活用した施策
    • パーソナライズに基づくコンテンツ出し分け
    • レコメンド

イシューオリエンテッド

ビジネス上の課題・イシューをデータに結び付けて把握する

たとえば

  • 新しくキャンペーンを打つことが決まっている。新しいキャンペーンの内容をどうするか
  • データを見るとこういうコンテンツがウケていることが分かった
  • このセグメントに対してこのような訴求のキャンペーンを打とう

ビジネス側の事情で今の課題、取り組むべきことが決まっている。それがデータではどうなっているか。データによると、どのように取り組んでいくのが適切か

これもイシューオリエンテッドの考え方

  • データを見なくても売上が落ち込んでいるのはわかっている。
  • その原因は何か。解決可能なのか、解決の糸口は?

データがなくても。LPの改善などはこちら寄り。データがなくても解決できるならそれはビジネスの成功。逆にデータだけではわからないこともある。特に改善施策案自体は他の事例などから考える必要がある。データオリエンテッドとイシューオリエンテッドは別。

分析の目的

分析する際には目的を整理する

分析の目的は4つに分けられる

  1. 現状把握
  2. モニタリング・異常検知
  3. 効果測定
  4. 問題発見

現状把握

  • 訪問者の年齢の分布は?
  • どこからの流入が多いのか
  • どの商品が最もよく売れているのか?

モニタリング、異常検知

「正しく推移しているかどうか」を知りたい

  • 問題があったらすぐにアクションを取れるように
  • 推移を追う
  • 定型的

効果測定

「施策の効果があったかどうか」を知りたい

  • ビフォーアフター○週間ずつ
  • 施策の目的となる指標が改善されたかに着目
  • レイアウトを変更したページからの遷移率を前後2週間ずつ比較

問題発見

  • アドホック
  • 特定の目的に沿ってデータを掘り下げていくことで見えてくる
    • 分析の目的によっては一般的なアクセス解析ツール(Google/Adobe Analytics)では不十分なことも。
  • 最近では一般的なアクセス解析とは別に特定の観点から問題を発見するタイプのツールも出てきている(GAのデータをAPIで取得して)。
    • ミエルカ→コンテンツと検索流入パフォーマンス
    • AIアナリスト→CV貢献のボトルネック
  • 異常検知から問題発見に移行することはある

問題発見が一番難しい。問題発見のためのメソッドやツールを知っていると分析の時間を短縮できる。

4つの目的は分けて考えること。効果測定が目的なのに問題発見のアプローチをとると無駄に時間がかかることになる。