広告運用の戦略(予算、規模、ターゲティング)とアカウントを管理するポイント

2017年1月25日
この記事は連載「広告運用の背後にある考え方」の全 3 ページ中 1 ページ目です。

予算、目的、戦略を抑える

  • 単純な問合せ数なのか、認知なのか
  • 効率なのか、ボリュームなのか
    • ボリューム
      • CVのが重要。
      • 予算には余裕がある。ある程度の無駄は仕方ない。
      • 想定されるすべてのセグメント、キーワードを網羅。「取れるだけ取る」
      • リサーチ、探索の意味もある
    • 効率
      • CPAが絶対
      • 予算が限られている。無駄は悪。
      • CVするセグメント、キーワードのみがターゲット。「取れる範囲で取る」
      • ジリ貧は覚悟

どちらを取るかで戦い方が変わる。どちらも取れるところが運用型広告のいいところ。
予算規模によってもとるべき戦略は変わってくる。予算規模は市場ごとに違う。特に検索連動型広告では如実。
一方を取れば何かが犠牲になることもある。

どちらかが100%という極端なケースばかりではないが、ボリュームの対極に効率という考え方があり、その間でバランスをとる必要があることは認識しておくべき。
それぞれにかけるべき予算はどの程度なのかは最初に決めておく。
そして現在の運用ではどのくらいのバランスなのかを把握しておく。

コントロールできるアカウントを作る

アカウント構築と運用の目的はアカウントをコントロールできるようにすること。

  • コントロールは目標に対するパフォーマンスと、予算消化の両面で。
  • アカウント構築と運用はセット。運用スタイルに応じて適した構造は異なる。
    • 運用のやり方が違うものは分ける
  • 基本は階層構造を意識
    • 階層構造になっているアカウントの箱は有効活用
      • キャンペーン
      • 広告グループ(ラインアイテム)
    • 検索連動型広告ではマッチタイプが階層になるのに注意
  • ボリュームあるものは細分化し、レアなものは統合する。ただし目的が違う場合は分ける
    • 配信量の多いものは分け、少ないものは統合する(ただし類似のインサイトのセグメント、検索連動型広告であれば同じ検索意図に限る)
    • 細かく分けても管理が困難に
  • システム制約に依存するものはmustで従う(予算を分ける、検索連動型広告の場合配信地域を分けるのはキャンペーン単位でしかできないなど)

特に検索連動型広告で部分一致で登録したワードの入札単価を上げすぎて、完全一致の入札単価を上回ったことはないだろうか。このようなコントロール破綻状態に陥りにくい構造を作ることが重要である。

ボトルネックの見極め

ボトルネックの見極めこそが運用の奥義

今の配信の状態がどうなっているか=なぜその配信量にとどまっているのか

  • 配信量が多い場合、どの設定を抑えれば配信が抑制されるか?
  • 配信量が少ない場合、どの設定を緩和すれば配信が促進されるか?
  • そもそも今が配信量の上限なのか?

配信量のボトルネックは知っておく必要があるが、
コンバージョン数のボトルネックも分かると理想である。

ボトルネックになる要素には

  • 予算設定
  • 入札単価
  • 目標CPA(個別の入札単価を設定せず、目標CPAを設定するシステムの場合)
  • 配信対象セグメントの大きさ
    • 検索連動型広告であれば検索数
    • リマーケティングであればリストサイズ

などがあり、それぞれ対応方法が異なる。
リストサイズがボトルネックなのに入札単価を上げても意味はない。
適切にこれらの要素を選択して配信量を操れなければならない

それをキャンペーン、ラインアイテムごとに把握できている状態にするのが重要。
そうすれば、急きょ予算を追加する場合などにも、どこにその予算を割り振ればいいかがすぐわかる。

アカウントを他人に引き継ぐ場合、このボトルネックの感覚が伝わらなければ意味はないが、
実際にはそんな感覚は引き継がれることなく、結局新任の運用者がゼロからその「感覚」を探ることになる。

規模

規模を踏まえた上で運用・改善施策は行う必要がある。
ポイントはインパクトと粒度。

インパクト

結果インパクトが重要

  • 配信量の多い、発生しているコストの大きいキャンペーンやセグメントから順番に施策を行う。
  • そこまで配信量自体は多くなくても改善幅が大きそうなもの

たしかにアカウントの全箇所を完璧にするのは理想だけど、検索連動型広告であればインプレッションの発生しない登録ワードに手を加えたところで意味はない。

粒度

予算規模、戦略(どこまで強気に攻めるか)に基づいて適切な粒度のアカウント構造がある。

ざっくりしすぎていても運用は成立しないし、一方で細かすぎてもそもそもデータが溜まらず最適化が遅れる。細分化しすぎており、個々のキャンペーンの配信量が小さい場合はキャンペーンを統合するのも有効である。

ボリュームあるものは細分化し、レアなものは統合する。ただし目的が違う(コンバージョンポイントが違う、訴求内容は大きく違う)場合は分ける。

ターゲティング

ターゲティングの際のアプローチ、方法論として整理しておくといい考え方を紹介する。

ターゲットを絞る考え方と広げる考え方

広告配信のスタンスには

  • 獲得効率のいいセグメントに絞って配信していく考え方
  • さらにCV獲得できるセグメントはないか、広げる考え方。むしろ取れるセグメント自体を作ってやる場合もある

がある。

DMP(サードパーティDMP)

DMPを利用したオーディエンスターゲティングでよくある誤謬に

「DMPを利用して確度の高そうなセグメントを絞り込んで配信する」

というものがある。典型的な「絞る考え方」である。

ところがDMPを導入すると追加コストがかかる。
したがってDMPを導入するなら、その分追加コスト分をペイする以上の売上を増やす必要がある。
つまりCVを増やす必要があり、そのためには広告投下量を増やすことが前提となる。
DMPを利用して絞っていたのでは結局費用対効果が悪化するのである。

本来サードパーティDMPは

  • 自社サイトの訪問者
  • キャンペーン参加者
  • その他特定の行動(特定のページの閲覧など)をした人

がどのような属性をもつオーディエンスなのか、どのような属性をもつオーディエンスがこういった行動をしやすいのかを知るために使うのが効果的である。
つまりその他のマーケティング活動で活用する(=広げる)知見を得るために使うのである。

サードパーティDMPは広げるために使うべきもの。
ファーストパーティDMPはCRM(成約率向上、クロスセル、アップセル)自体の効率化に使えるが、サードパーティDMPの効果的な使い方には気をつけておきたい。

ブロード配信の有効性

一般に検索連動型広告では指名検索、ディスプレイ広告ではリマーケティング広告は獲得効率が良好である。
これらの施策は言うならば「有から有を生む」施策であり、最初の「有」が枯渇したら施策自体が広がらなくなる。
認知獲得や流入のための施策を打っていれば指名検索数や(CV確度の高い)リマーケティングリストも確保できるのだが、そうでなければ指名検索自体が少ない、リマーケティングする対象がいないということになる。

効率のいいセグメントに「絞る」というのはそういうことなのである。

広げる施策には類似ユーザ配信・オーディエンス拡張などに始まり、大き目のセグメントサイズのオーディエンス配信などなどがあるが、その極端なものがブロード配信である。

誰でもいいのでとりあえず一旦流入させて、サイト内での行動によってリマーケティングリストを適切に作成すれば(30秒以降閲覧、非直帰など)、興味のある見込み客リストは作れる。これこそ「無から有を生む」を施策である。

そうなると流入~リマーケティング全体でかかるコストと成果の見合いということになる。もちろん最初の流入にかかるコストが高額なのであれば意味がない。DMPコストなどを含むケースである。その点で最初の流入コストが数円と格安で済むブロード配信が有効なのである。

最後のリマーケティングの部分だけでなく、トータルで考えなければならない。それがマクロ視点の運用である。

ターゲティングの網の張り方~足し算と引き算

言葉は悪いが、刈り取り型の(CVを求める)広告配信というのは網を張って魚を捕らえるのに似ているかもしれない。その網の張り方には足し算的アプローチと引き算的アプローチがある。

  • 足し算:セグメント・ターゲティング条件・を追加していくことでターゲットを完成させる
    • ディスプレイ広告ではターゲティング条件でオーディエンスリストを追加していくやり方。配信面ターゲティングではホワイトリスト配信がこれにあたる。
    • 検索連動型広告では細かい単位のキーワードを追加していくことによって全体を網羅する考え方。極端な形が全ワード完全一致での登録である
  • 引き算:あらかじめ大き目のセグメントを設定しておいて、そこから不要なものを除外していく
    • ディスプレイ広告ではブラックリスト指定配信
    • 検索連動型広告ではざっくりとした(拡張する可能性のある単ワードの)部分一致で広く網を張っておいて、除外ワード設定をしていくやり方

さすがに生簀の広いディスプレイ広告は足し算アプローチが中心になるが、検索連動型広告ではそもそもその領域の検索ボリュームに限りがある、生簀が小さいため、足し算と引き算の両アプローチを選択できる。
足し算であれば足していくもの1個1個の大きさ、引き算であればざっくりとした全体の大きさによって、どちらを使うか考えるのがいい。検索連動型広告ではキーワードによっても適切な方法は異なる。
足し算と引き算はターゲティングの際の引き出しとして知っておくといい。

システムの理解

広告運用においてシステムを理解することは大変重要なことである。

  • システムの制約条件、階層構造と設定項目
  • システム自体の動き方、特に自動最適化機能に関連する部分
    • 自動最適化あり→自動最適化機能の操り方
    • 自動最適化なし(手動入札)→入札単価、予算の決め方

自動最適化周りはこのどちらかで大きく考えることが変わってくる。
自動最適化があるものは単にCVに管理画面上のパフォーマンスの数字をあわせることではなく、その最適化がうまく機能するようにすることが仕事になる。
学習しやすい(データが溜まりやすい)セグメント設計などである。

確かにユーザのインサイトを知ることも大事。
細かくセグメントを作ることも(ある程度)大事。
そらの重要性はある程度知られているが、実はシステムの挙動を知り、それに合わせたキャンペーンの分け方やターゲット条件の指定をすることが重要なのである。

機能自体は容易に知ることができるが、動き方については知る機会が少ない(配信プラットフォーム側の営業やサポート、プラットフォームの運用者自体が知らないことも残念ながら多い)ので、試行錯誤しながらこのあたりを把握していく姿勢もあったほうがいい。
ただそもそもシステムが学習していく仕組みというのは、ある程度常識的な大枠の中で共通している。
システムが探索して、データを獲得して、活用する過程、あとは統計的なこと。
そのあたりは使うデータと詳細な手法、閾値、データの分け方が違うだけで、大枠の動き方は共通してくる。GoogleやCriteoを除けばそんな人間が認識困難な実装はないはず。だから機械学習などについても初歩的なことは知っておくのがいいのである。

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